恋するお弁当箱
「どうしたの?」
 離席していた莉子がコーヒーの入ったカップを片手に戻って来る。
「高壺さんが私の机の引き出しを開けてたの」
「こわっ。なくなったものとかない?」
 言われて咲穂はざっと確認する。が、とくに紛失したものはなかった。

「大丈夫みたい」
「気持ち悪いね。なんで引き出し開けてたんだろう」
 言われて頭に浮かんだのはお弁当箱だ。だが、そんなわけないよね、と思って口には出さなかった。お弁当箱はとうにロッカーに戻しているから、ここにはない。
 なんとか仕事を終えて莉子と一緒にロッカールームに行き、咲穂は驚愕した。

「なにこれ!?」
「ひど……」
 咲穂のロッカーの扉が、殴られたように大きくへこんでいた。

「なんでこんなことに? まさか高壺さん?」
 莉子がまじまじとへこみを見て言う。
 同じ人物を頭に浮かべていたが、咲穂は返事ができなかった。証拠はなにもない。

「中身は無事?」
 言われて、咲穂は慌ててロッカーをあける。中に入っていたカバンはそのままで、漁られた様子はない。

「大丈夫みたい。係長も課長もまだいたよね。報告してくる」
 咲穂は慌ててフロアに戻った。係長がいなかったので課長にロッカーが破壊されていたことを報告する。課長は顔をしかめて咲穂にたずねた。
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