恋するお弁当箱
「ありがとうございます。では、遠慮なくいただきます」
受け取った彼は綺麗な一礼をしてレジへと向かう。
「いいことしたなあ」
咲穂は頬をだらしなく緩め、一抹のさみしさを隠して帰路についた。
翌日、出勤した咲穂は自分が勤めるビルを下から見上げた。
何度見ても大きい。
ここ竜ノ門ヒルズは四十階建てで、その一角に彼女の働く『ハヤマ冷蔵食品』が入っている。
エレベーターを乗り継いで職場に着くと、ロッカーに荷物を入れて自席につくと、隣席で同じ庶務課の関原 莉子に話しかけられた。
「おはよー。お掃除ロボ、また魔の通路にはさまったらしいよ」
「また?」
咲穂は軽く眉を上げた。
会社で導入したお掃除ロボは家庭用のそれとは違って、高さが一メートルほどで横幅もある。監視カメラ付きでフロアを自動清掃してくれるのだが、フロアの奥にある倉庫への通路が狭く、そこではさまって出られなくなる。だから会社の人たちは自然と魔の通路と言い始めていた。
「あの通路は狭い上に電波が届かないから制御が効きにくいんだって」
「奥に行くにしたがって狭くなっていくの、設計ミスらしいね。こんな近代的なビルでもそんなミスがあるんだってびっくりした。もっと広くしてくれたらいいのに」
「咲穂は閉所恐怖症だから怖いでしょ」
「うん。課長の配慮で倉庫に行かずにすんで助かってる」
狭いところが怖いなんていう理由で誰でもできることができていないのは非難されるかと思ったが、ひとりを除いてみんな同情してくれているのがありがたい。
受け取った彼は綺麗な一礼をしてレジへと向かう。
「いいことしたなあ」
咲穂は頬をだらしなく緩め、一抹のさみしさを隠して帰路についた。
翌日、出勤した咲穂は自分が勤めるビルを下から見上げた。
何度見ても大きい。
ここ竜ノ門ヒルズは四十階建てで、その一角に彼女の働く『ハヤマ冷蔵食品』が入っている。
エレベーターを乗り継いで職場に着くと、ロッカーに荷物を入れて自席につくと、隣席で同じ庶務課の関原 莉子に話しかけられた。
「おはよー。お掃除ロボ、また魔の通路にはさまったらしいよ」
「また?」
咲穂は軽く眉を上げた。
会社で導入したお掃除ロボは家庭用のそれとは違って、高さが一メートルほどで横幅もある。監視カメラ付きでフロアを自動清掃してくれるのだが、フロアの奥にある倉庫への通路が狭く、そこではさまって出られなくなる。だから会社の人たちは自然と魔の通路と言い始めていた。
「あの通路は狭い上に電波が届かないから制御が効きにくいんだって」
「奥に行くにしたがって狭くなっていくの、設計ミスらしいね。こんな近代的なビルでもそんなミスがあるんだってびっくりした。もっと広くしてくれたらいいのに」
「咲穂は閉所恐怖症だから怖いでしょ」
「うん。課長の配慮で倉庫に行かずにすんで助かってる」
狭いところが怖いなんていう理由で誰でもできることができていないのは非難されるかと思ったが、ひとりを除いてみんな同情してくれているのがありがたい。