恋するお弁当箱
「噂ではロボット掃除機の導入って、備品の盗難がきっかけだったじゃんね。あんなていたらくで盗難を防げるのかな」
「顔認証で部外者がいたら警報を鳴らすって聞いたけど」
「それでも盗難がなくならずに警報も鳴らないってことは、内部犯だよね」

 備品管理は庶務の仕事でもあるので、盗難は切迫した案件だ。
 ボールペン、ストックのコーヒー、砂糖など。
 ひとつひとつは些細でも、積み重なれば大きいし、こういうものは放置しておけば物も量もエスカレートするのが常だから放置しておけない。

「あのロボットの一番の問題はかわいくないってところよ」
「確かに。猫型がいいなあ、とは思った」
 莉子の主張に咲穂は頷く。

「それじゃファミレスの配膳ロボットとかぶるし。警備で連想するなら犬じゃない?」
「それはそうかも」
 咲穂は想像してみる。犬の耳をつけただけでかなり親近感が増しそうだ。いやでもやはり猫がいい。

「あ、昨日はお弁当箱買えた?」
「それがね」
 急カーブした話題に咲穂は昨日の出来事をかいつまんで話した。莉子は目を丸くして、信じられない、という目で咲穂を見る。

「イケメンだったのに連絡先も交換せずに帰ったの!? なんでそんなチャンス逃すのよ!」
「チャンスって」
 咲穂は気圧されて聞き返す。

「なん年も彼氏いないんでしょ? 積極的にいかないと!」
「そこまで恋愛に情熱を注げないなあ。それより、お昼楽しみにしてるからね」

「私の方こそ楽しみだよ、咲穂の手作り弁当。今日はどんな弁当箱だろ」
「見てからのお楽しみ」
 咲穂がにこっと笑ったときだった。
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