恋するお弁当箱
「お弁当作って来たんですかあ? また写真撮らせてください!」
 割って入った声に、咲穂は頬をひきつらせた。
 振り返ると派遣で入った高壺樹絵里(たかつぼ じゅえり)がにこにこと立っている。この課で唯一、咲穂の閉所恐怖症をバカにしてくる人物だ。

「違うの、今日は外で買ったお弁当なの」
 とっさに咲穂は嘘を言ったのだが。
「作ったって言ったのに」
「ちょっと見栄張っただけ。作ってないから」
 咲穂がさらに言うと、樹絵里はぶすくれた。

「お弁当を作ってくれないと困るんですけどー! 唯一のいいところをなくしてどうするんですかあ!」
 どういうことなのか、さっぱりわからない。自分のお弁当はいつも自分のために作ってきているのであって、そんなことを言われる筋合いはない。

「明日からはちゃんと作ってきて写真撮らせてくださいよね!」
 一方的に宣言し、樹絵里はぷりぷりと怒って席に戻る。
「どういうこと?」
 莉子に聞かれるが、咲穂はただ首をふる。

「まったくわからない。なんの約束もしてないから」
「だよね」
 莉子と一緒に首をかしげる。

「あの人、咲穂のこと完全になめてかかってるよね。最初に優しい対応しちゃったせいだろうけど」
「今ではちゃんと断ってるのにね」
 はあ、と咲穂はため息をつく。
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