恋するお弁当箱
 遅れて、樹絵里も呼び出される。
 樹絵里は賢翔を見て顔を輝かせたが、隣に咲穂がいることに気付いて顔をしかめた。

「なんの用ですかあ?」
 不機嫌な樹絵里を座らせ、課長は話し始める。
「高壺さん、昨日、静谷さんを倉庫に閉じ込めましたね」
「知りませーん」
 樹絵里がそっぽを向くと、課長はノートパソコンの画面を彼女に向けた。

「システム部に確認しました。あなたが静谷さんを呼び出すメールがありましたよ」
「なんでよ、ちゃんと消したのに!」
 言ってから、樹絵里ははっと口を押える。

「ロボット掃除機のカメラ映像で、あなたが倉庫のドアノブの前でなにかの作業をしているのが映っていました。あれはドアのカギ穴につまようじかなにかを入れて鍵を開けられなくしていましたね。非常に悪質です」
 賢翔はそう言って、持参のタブレットで映像を流す。

「さらに、こちらの会社で備品の盗難があった日とロボット掃除機が異常をきたす日が一致しました。あなたは監視カメラに映るのを懸念してロボット掃除機を通路の奥に追い込んだようですが、カメラはほかにもあったんですよ。当方で記録されている映像です。あなたが備品を持って行く姿がしっかりと映っていますよ」
 タブレットには、給湯室で樹絵里がコーヒーや紅茶のパック、砂糖などをバッグに入れている姿が流れた。

「なによこれ、プライバシーの侵害じゃない!」
 樹絵里の抗議は課長がすぐに否定する。
「これはプライバシーの侵害には当たらない。システム部の調べで君がフリマサイトで当社の備品を売っているのも確認した。監禁の件も含め、警察に通報済みだ。もうすぐ君のところにも来るだろう」
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