恋するお弁当箱
「なによ! なんで私ばっかりこんな目に遭うのよ!」
 樹絵里は涙目で咲穂をにらむ。
「あんたみたいにのほほんと苦労知らずの人ばっかりいい目を見て! ずるい!」

 樹絵里の八つ当たりに、咲穂はあっけにとられた。
 自分だって人なみの苦労をしてきた。楽をしてきたわけじゃない。なのに、こんなふうに罵られるなんて。

「私なんて小さい頃にお弁当も作ってもらえなかったんだから! なのにこれみよがしに毎日お弁当もってきて! そんなに私を傷付けて楽しい!?」
 彼女がお弁当にトラウマを持っているなんて初耳だった。

「自分ばっかり幸せアピールして、イケメンとも仲良くなって! 私だって幸せになりたい! なのにどうしてみんなで虐めるの! ちょっと仕返ししただけでなんで私が悪くなるの!」
 わあああん、と泣き出す樹絵里に、咲穂は顔をしかめた。

 ただ普通に生きているだけだなのに、彼女にとっては咲穂の行動がいじめだったというなら、自分はなにをどうしたらよかったというのか。勝手に被害者になってこっちを加害者扱いされても、そんなの納得できるわけがない。

「高壺さん。私は楽して生きてるわけじゃないし、ずるもしてない。周りのみんなだってそうだよ。みんな努力してるけど、それをいちいち言わないだけだよ」
「嘘よ、みんな私より楽してる! なのに、ちょっとでも私がわけてもらおうとするとみんな怒る!」
 咲穂はひっかかりを感じて樹絵里に尋ねる。

「わけてもらうって、もしかして備品の持ち帰りとか、ブランドものをねだったりすることを言ってる?」
「会社のものなんだからみんなのものですよね。だったら私にだって権利あるじゃないですか。私だってブランドものほしいし、ねだられた側は欲しがられるほどいいもの持ってるって、いい気分になりますよね!?」
 考え方が根本からおかしい、と咲穂は頭を抱えた。課長も同様で、賢翔は黙っているがやはりあきれている気配がした。
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