恋するお弁当箱
エピローグ
 土曜日、咲穂は思いっきりおしゃれをして家を出た。
 彼が電車で連れていってくれたのは、梅がにぎやかに咲き誇る公園だった。
 良い香りが園内に満ちていて、多種多様な梅を見て回るだけで楽しい。

 途中にある四阿(あずまや)で咲穂が作って来たお弁当を広げた。花の形をした二段のピンク色のお重で、これも咲穂のお気に入りだ。
 今日は冷凍食品の助けを借りつつあれこれと手作り品も入れてみたが、賢翔にも好評で咲穂はほっとした。

 食べ終えたタイミングで、咲穂は改めて賢翔に礼を述べた。
「このまえは助けに来てくれてありがとうございます。あのとき、もうダメかと思いました」
「見つけられて良かったです。まさか会社であんな目に遭うなんて想像もできないですよね」

「はい。でも……織山さんが、『俺が助けに行く』って言ってくれたから」
 言ってから、なんだか恥ずかしくなった。食事に行ったあのときに言ってくれたのは気休めなのだろうに、それにすがる自分が恥ずかしい。

「これからも、いつでも助けに行きますよ」
 さらっと返されて、咲穂はさらに恥ずかしくなった。
「ごめんなさい、その、本気にしたらダメですよね」
 言い訳のように続けると、ふふっと笑う声が聞こえた。

「本気にしてください。いつだって助けに行きますから」
 咲穂の顔がかーっと熱くなった。今なら暖房器具の代わりに部屋を暖めることができそうなくらいに顔が熱い。

「咲穂さん。俺はあなたが好きです」
 続いた言葉に、咲穂は驚いて顔をあげた。
 そこには真剣な、しかし甘さを含んだ彼のまなざしがある。
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