スランプ作家と桜のアリス
2~5th Day
あの日は足元がフワフワしていて、どうやってホテルまで帰ったのかも、ほとんど記憶がない。
けれど次の日から一緒に過ごすことに決めた。柊さんが真剣に伝えてくれている以上、避けたりするのはダメだと思い、一緒に過ごして自分の気持ちに向き合おうと決意した。ーーブロードウェイのミュージカルチケットを無駄にはできなかったから……って気持ちも少しあったのだけれど。
柊さんはあの日以降は特に何も言わず、毎日普通に接してくれている。もちろん、恋人同士のようなスキンシップもなく、ごく普通の友達同士の距離感でいてくれている。
私はふとした時に、あの夜のキスを思い出しては恥ずかしくなったり、その意味を考えたり……今後の自分自身についても考えなければいけないし、悩みが尽きない。
今はもう5日目の夜。
未だに私の中の答えは出えていない。
正直、柊さんには惹かれていっている自分がいる。友達の距離感で過ごしてきたけれど、随所に彼の優しさや、ありがたいことに私への想いを感じることがあった。大ファンの作家さんというフィルターを取って、人として尊敬できるし魅力的な人だ。
ただ、それだけで好きと決めていいのだろうか。好意を向けてくれていることに甘えて、乗っかってしまっているだけなのではないか。
ニューヨークに住むことも合わせると余計に答えが出せていない。
海外生活がしたい!という憧れが叶うからって、それでいいのだろうか。彼に全て甘えて、私自身は仕事を捨てて何もなくて……試験に落ちた現実から逃げているだけなのではないか。
答えを出せない自分にもイライラしてしまって。焦る気持ちとともに浅い眠りについた。