【WEB版】「無価値」と捨てるのは結構ですが、私の力は「本物」だったようですよ? ~離縁された転生令嬢、実は希少魔法の使い手でした~
14 村への帰還
「さて……。俺はあの魔獣の処理をして帰るつもりだが」
「あの魔獣の処理ですか。どうされるんでしょうか。大きいですし、流石に運んだりはできませんよね」
「あの巨体だからね。ただ、いい資源にはなるんだ。貴重な資源だね」
「資源?」
あら。魔獣についての知識は浅いのだけど。
前世のありがちな設定でいうと魔石が採れるとかなんだろうか。
でも、アーティファクトの動力源として魔石を使うなんて例はない。
「魔獣の魔力源は心臓だ。魔獣の心臓は、滋養強壮にとてもいいんだよ」
「滋養強壮!」
え、もしかして魔獣って、ただの漢方の素材?
「他の肉はまぁ、森の獣や虫が分解するだろう。心臓だけ抜いて持って帰る」
それだけか。
魔獣なんてものを倒した成果物としては世知辛いなぁ。
なんと割に合わない討伐だろう。
せめて一攫千金の値段がついてほしい。
「作業を待っていてくれるなら送るよ。キミたちを無事に村に送り届けたい」
「それは……」
今、私たちが森の獣などに襲われないのは、フィン様が所有している獣よけのアーティファクトのおかげだ。
せっかく一緒に来てくれるというのならお言葉に甘えた方がいい。
これはリーフェルトくんの安全にも関わる。
「そうおっしゃってくださるならば、甘えてもいいでしょうか。まだ不安なので」
「もちろんだ」
フィン様は快く引き受けてくれた。
なので、私たちは魔獣が倒された場所へ一緒に戻る。
しばらく作業を待ってからフィン様と一緒に村への道を歩いた。
フィン様はリーフェルトくんの信頼を得たようで、道中も楽しげに話していた。
「ほら、そろそろ疲れただろう。乗せてあげるよ」
「わー!」
そう言ってリーフェルトくんを肩車してあげるフィン様。
七歳はけっこう身体も重いと思うけど、軽々と持ち上げ、足場の悪い森を歩く。
鍛えているのねぇ。たくましいかぎりだ。
リーフェルトくんにもいい経験になっただろう。
こんなこと村の大人には頼めないものね。
やっぱり男の子には父親の存在って大きいのかなぁ。
私は女手一つどころか、ただの従兄弟でほんの数ヶ月一緒に暮らしただけの関係。
足りないものはいくらでも思いつく。
リーフェルトくんの未来に、どれだけのものを与えてあげられるか。
思うところがあっても投げ出すことはないけどね。
「むら―!」
私たちは無事に村に帰ることができた。
本当によかった。昨日は死にかけたのよ。生きて帰れたわ。
村に帰ってきた私たちを村人たちが集まって迎えた。
「二人とも、無事だったか!」
「この人は……?」
「皆さん、はじめまして。俺はバルナーク領の騎士、フィンです。森で魔獣を追っていたところ、こちらのアーシェラさんとリーフに会いまして。それから皆さんには安心してほしい。この地域を騒がせていた魔獣は昨日、すべて討伐しました」
フィン様の報告を聞いて村人たちがざわめく。
喜びと困惑の両方の声が上がった。
「教会があるのですね。このまま神父様に報告をしておきましょう。アーシェラさん、リーフ。昨日からお疲れ様」
「はい、本当にありがとうございました、フィン様」
「ありがとう、フィンお兄ちゃん!」
「おう!」
フィン様とお別れし、村の人たちと軽く言葉を交わしながら家に帰る。
ようやく人心地がつけるといったところだ。
「今日のお仕事は……あまりしないで、ゆっくり休みましょう、リーフェルトくん」
「うん! ……フィンお兄ちゃんとまたお話しできる?」
「フィン様と?」
「うん」
よっぽと好きになったのねぇ。
村にはああいうタイプの男性はいない。
リーフェルトくんが実の父親と会ったことがあるのかは定かじゃないけど。
子供心にああいう人がいたらな、なんて思うことがあるのかもしれないわ。
「あとで教会に挨拶に行きましょうか。村に泊まるとは限らないし」
「うん!」
パァアッと輝いた笑顔を浮かべるリーフェルトくん。かわいい。
もう出会った頃の心配になる表情じゃない。
元気になった健康的な笑顔そのものよ。
一休みし、着替えてから村にある教会へリーフェルトくんと共に向かった。
「あっ」
「お?」
私たちが教会に着くと、ちょうどフィン様が教会から出てくるところに鉢合わせた。
「どうしたんだい? 二人は家に帰ったんじゃ?」
「フィン様が村にいる間にもう一度挨拶しておきたいと思いまして。いつ、村を出発されるかわかりませんでしたので休憩をしてからと。もう村から出発を?」
「ああ。早く領地に帰り、皆を安心させたいからね」
魔獣騒ぎはバルナーク領から始まっている。
フィン様が討伐の任を負っていたのだろう。
いつまでも領地に彼が帰らなければ、きっと同僚や友人、恋人が彼を心配するに違いない。
「そうですか。リーフェルトくんがずいぶんと懐いたようで。少し残念です」
私がそう告げると、フィン様の視線が私からリーフェルトくんへ移る。
フィン様はリーフェルトくんの前に来てしゃがみ、リーフェルトくんに視線を合わせた。
「リーフ。短い間だったけど、楽しかったよ」
「……うん」
リーフェルトくん、本当に村の大人たちに向ける感情とは違う様子だな。
いろいろと保護者目線、母親目線で複雑に考えてしまっていたけど、単純にリーフェルトくんの初めて見る騎士様で、その姿に憧れを抱いてしまっただけかもしれない。
フィン様、格好いいし、実力もあるみたいだからね。
男の子なら余計に憧れるだろう。
「俺は隣のバルナーク領に住んでいるんだ。気が向いたら遊びに来るといい。歓迎するぞ」
「ほんとう⁉」
「ああ、もちろんだ。まぁ、観光要素も何もないから暇かもしれないけどな」
「フィン様……」
フィン様と一通り言葉を交わし、村を出るところまでリーフェルトくんと一緒に見送る。
姿が見えなくなって寂しそうなリーフェルトくん。
「……また会えるわ、きっと」
「……うん」
その機会があるだろうか。
森がなければ隣領とはいえ比較的近い位置だ。
移動できなくはない距離だけど……。
一晩だけの縁。
それも私たちが助けられた側であり、恩があるのはこちらだ。
フィン様はああ言ってくれたけれど。
押しかけるのはやっぱり迷惑だろう。
彼との出会いも、いつか、いい思い出の一つとなって、やがて忘れていくんだろうな。
「あの魔獣の処理ですか。どうされるんでしょうか。大きいですし、流石に運んだりはできませんよね」
「あの巨体だからね。ただ、いい資源にはなるんだ。貴重な資源だね」
「資源?」
あら。魔獣についての知識は浅いのだけど。
前世のありがちな設定でいうと魔石が採れるとかなんだろうか。
でも、アーティファクトの動力源として魔石を使うなんて例はない。
「魔獣の魔力源は心臓だ。魔獣の心臓は、滋養強壮にとてもいいんだよ」
「滋養強壮!」
え、もしかして魔獣って、ただの漢方の素材?
「他の肉はまぁ、森の獣や虫が分解するだろう。心臓だけ抜いて持って帰る」
それだけか。
魔獣なんてものを倒した成果物としては世知辛いなぁ。
なんと割に合わない討伐だろう。
せめて一攫千金の値段がついてほしい。
「作業を待っていてくれるなら送るよ。キミたちを無事に村に送り届けたい」
「それは……」
今、私たちが森の獣などに襲われないのは、フィン様が所有している獣よけのアーティファクトのおかげだ。
せっかく一緒に来てくれるというのならお言葉に甘えた方がいい。
これはリーフェルトくんの安全にも関わる。
「そうおっしゃってくださるならば、甘えてもいいでしょうか。まだ不安なので」
「もちろんだ」
フィン様は快く引き受けてくれた。
なので、私たちは魔獣が倒された場所へ一緒に戻る。
しばらく作業を待ってからフィン様と一緒に村への道を歩いた。
フィン様はリーフェルトくんの信頼を得たようで、道中も楽しげに話していた。
「ほら、そろそろ疲れただろう。乗せてあげるよ」
「わー!」
そう言ってリーフェルトくんを肩車してあげるフィン様。
七歳はけっこう身体も重いと思うけど、軽々と持ち上げ、足場の悪い森を歩く。
鍛えているのねぇ。たくましいかぎりだ。
リーフェルトくんにもいい経験になっただろう。
こんなこと村の大人には頼めないものね。
やっぱり男の子には父親の存在って大きいのかなぁ。
私は女手一つどころか、ただの従兄弟でほんの数ヶ月一緒に暮らしただけの関係。
足りないものはいくらでも思いつく。
リーフェルトくんの未来に、どれだけのものを与えてあげられるか。
思うところがあっても投げ出すことはないけどね。
「むら―!」
私たちは無事に村に帰ることができた。
本当によかった。昨日は死にかけたのよ。生きて帰れたわ。
村に帰ってきた私たちを村人たちが集まって迎えた。
「二人とも、無事だったか!」
「この人は……?」
「皆さん、はじめまして。俺はバルナーク領の騎士、フィンです。森で魔獣を追っていたところ、こちらのアーシェラさんとリーフに会いまして。それから皆さんには安心してほしい。この地域を騒がせていた魔獣は昨日、すべて討伐しました」
フィン様の報告を聞いて村人たちがざわめく。
喜びと困惑の両方の声が上がった。
「教会があるのですね。このまま神父様に報告をしておきましょう。アーシェラさん、リーフ。昨日からお疲れ様」
「はい、本当にありがとうございました、フィン様」
「ありがとう、フィンお兄ちゃん!」
「おう!」
フィン様とお別れし、村の人たちと軽く言葉を交わしながら家に帰る。
ようやく人心地がつけるといったところだ。
「今日のお仕事は……あまりしないで、ゆっくり休みましょう、リーフェルトくん」
「うん! ……フィンお兄ちゃんとまたお話しできる?」
「フィン様と?」
「うん」
よっぽと好きになったのねぇ。
村にはああいうタイプの男性はいない。
リーフェルトくんが実の父親と会ったことがあるのかは定かじゃないけど。
子供心にああいう人がいたらな、なんて思うことがあるのかもしれないわ。
「あとで教会に挨拶に行きましょうか。村に泊まるとは限らないし」
「うん!」
パァアッと輝いた笑顔を浮かべるリーフェルトくん。かわいい。
もう出会った頃の心配になる表情じゃない。
元気になった健康的な笑顔そのものよ。
一休みし、着替えてから村にある教会へリーフェルトくんと共に向かった。
「あっ」
「お?」
私たちが教会に着くと、ちょうどフィン様が教会から出てくるところに鉢合わせた。
「どうしたんだい? 二人は家に帰ったんじゃ?」
「フィン様が村にいる間にもう一度挨拶しておきたいと思いまして。いつ、村を出発されるかわかりませんでしたので休憩をしてからと。もう村から出発を?」
「ああ。早く領地に帰り、皆を安心させたいからね」
魔獣騒ぎはバルナーク領から始まっている。
フィン様が討伐の任を負っていたのだろう。
いつまでも領地に彼が帰らなければ、きっと同僚や友人、恋人が彼を心配するに違いない。
「そうですか。リーフェルトくんがずいぶんと懐いたようで。少し残念です」
私がそう告げると、フィン様の視線が私からリーフェルトくんへ移る。
フィン様はリーフェルトくんの前に来てしゃがみ、リーフェルトくんに視線を合わせた。
「リーフ。短い間だったけど、楽しかったよ」
「……うん」
リーフェルトくん、本当に村の大人たちに向ける感情とは違う様子だな。
いろいろと保護者目線、母親目線で複雑に考えてしまっていたけど、単純にリーフェルトくんの初めて見る騎士様で、その姿に憧れを抱いてしまっただけかもしれない。
フィン様、格好いいし、実力もあるみたいだからね。
男の子なら余計に憧れるだろう。
「俺は隣のバルナーク領に住んでいるんだ。気が向いたら遊びに来るといい。歓迎するぞ」
「ほんとう⁉」
「ああ、もちろんだ。まぁ、観光要素も何もないから暇かもしれないけどな」
「フィン様……」
フィン様と一通り言葉を交わし、村を出るところまでリーフェルトくんと一緒に見送る。
姿が見えなくなって寂しそうなリーフェルトくん。
「……また会えるわ、きっと」
「……うん」
その機会があるだろうか。
森がなければ隣領とはいえ比較的近い位置だ。
移動できなくはない距離だけど……。
一晩だけの縁。
それも私たちが助けられた側であり、恩があるのはこちらだ。
フィン様はああ言ってくれたけれど。
押しかけるのはやっぱり迷惑だろう。
彼との出会いも、いつか、いい思い出の一つとなって、やがて忘れていくんだろうな。