恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜

プロローグ

好きだったのは、ずっと──高峰くんだった。

あの柔らかい笑顔も、
気づけばそっと守ってくれている優しさも、
全部が、ずるいくらいに完璧で。


だから私は、きっと叶わないとわかっていながらも、


“特別”にはなれないことに、気づいていながらも、


それでも、そばにいられるだけで嬉しかった。
……そして、同じくらい、苦しかった。





そんな私が変わったのは、あの夜──


「誰に抱かれてるのか、ちゃんと見てて」


そう言って、まっすぐ私を見つめたその瞳から、目を逸らせなかった。



いつもは軽口ばかりのくせに、
本気なんて見せないくせに。


私が傷ついた顔をしたときだけ、
ひどく優しくなるのは──本当に、ずるい。


酔った勢い、なんて。そんなのは言い訳にもならなかった。


あの夜、確かに私は、彼に触れられて。
腕の中に抱きしめられて。
そして、静かに、でも確かに──堕ちてしまった。


心は、ずっと高峰くんに向いていたはずなのに。


それでも、あの腕の温度から目を逸らせなかった。


恋をしたのは、高峰くんだった。


でも、堕ちたのは──意地悪な同期の腕の中。



──まだ知らなかった。


この関係が、これからどれほど私の心を掻き乱すのかなんて。


< 1 / 44 >

この作品をシェア

pagetop