恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜

優しい同期と意地悪な同期


「佐伯、手伝おうか?」


昼休み。

コピー室から資料を抱えて出てきたところで、その声に振り返ると──


いつもの、穏やかな笑顔の人がいた。


「ありがとう。でも、もう終わったところ」

「そっか。じゃあ、エレベーター、一緒に行こっか」


そう言って歩き出す高峰颯真(たかみね そうま)くん。


営業部の同期で、気配り上手な“社内の王子様”。


スラッとした長身に整った顔立ち、柔らかい物腰で、誰に対しても平等に優しい。


入社以来、ずっと女性社員の人気トップを独走中なのも頷ける。


──私は、その“誰にでも優しい”彼に、ずっと特別な感情を抱き続けている。


配属初日のあの日。


右も左もわからず緊張でガチガチだった私に、最初に声をかけてくれたのが彼だった。


「同期、だよね?俺も同じ部署。高峰颯真。」

「さ、佐伯有紀(さえき ゆき)です……よろしくお願いします。」

「よろしく、佐伯さん。」


その笑顔に、張り詰めていた気持ちがふっとほどけた。


きっと──あの瞬間から、もう私は惹かれてたんだと思う。


OJT期間も、初めての営業同行も、
失敗してひとりで落ち込んでいた夜も。


さりげない言葉や行動で、何度も助けられた。


(……だから、好きになるのは、仕方なかった)


何かが始まるわけでもないのに、優しくされるたびに少しだけ期待してしまう。


でもそれが、ただの“同期”としての思いやりだってことは、もうわかってる。


だから、たまに苦しくなる。
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