【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜

本当の気持ちは言えないまま

シャワー後。


「弟の服あるから、使って。サイズ……たぶん、いけると思う」


「……ん」



特に驚くこともなく、いつも通りの調子で受け取った黒瀬だったが、手にある服を見て、ふっと笑った。


「有紀ん家で、まさか服借りる日が来るとは思わなかった」


渡されたのは、弟の服の中でも比較的大きめの、オーバーサイズ気味のTシャツと、少し細身のスウェット。


数分後。


「……どう?」


有紀がタオルで髪を拭きながらリビングに出ると、すでに黒瀬は着替え終えていて、ソファに座っていた。


何気ない弟の部屋着を、どこか洗練された空気で着こなしているのが、妙に悔しい。


Tシャツはゆったりしていて、スウェットの裾は黒瀬の足首でわずかにたるんでいたけど、それすら“計算されたラフさ”に見えるのが不思議だった。



「……似合ってる。ていうか、なんか着こなしてるし」


「だろ? サイズはジャストじゃないけど……まあ、俺が着ればなんとかなる」


「……ほんと、なんとかなってるのが、なんかむかつく」


「……なんでだよ。…ありがと、借りるわ。」


「洗濯、して返してね」


「えっ、そこまで要求します?」


「ふふ、冗談だよ。」



そう言い合いながらも、どこか空気はゆるんでいて──



いつもより素直に、自然に、ふたりの距離が縮まっていた。





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