【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
明かりを落とした寝室に、静かな吐息が溶けていく。


どちらともなく引き寄せられた身体が、ふとした瞬間に触れ合って、
くちづけへと自然に導かれた。


有紀の髪に指を絡めながら、黒瀬が何度も唇を落とす。



頬、耳たぶ、首筋。



触れるたびに熱が上がり、息が浅くなっていく。



「……あーあ、可愛すぎ」


「……なにが……っ」


「全部」



そう言って、有紀の腰に手をまわし、ゆっくりとベッドに沈める。



その体勢のまま、唇がまた重なった。



深く、そして長く。


触れ合うだけのくちづけじゃ足りなくて、何度も、角度を変えて確かめ合う。



指先が肌をなぞるたび、くすぐったさと甘さが交じって、
声にならない吐息がこぼれた。



「……有紀、ここ好き?声、変わった。」


「っ……、ちが……」


「わかりやす」



黒瀬の声は、耳元で熱を帯びていた。


まるでその温度にうなされるように、有紀の心が揺れる。



「…黒瀬くん」



そっと名前を呼ぶと、黒瀬は有紀の手を取って、指を絡めた。



「……ん?」


「……好き」



一瞬、空気が止まった。



「……え」

「黒瀬くんに……ギュッてされるの、好き」


そう伝えたとたん、黒瀬くんの目がふわっと揺れる。



まるで、こぼれそうな想いを必死で飲み込んでいるような、そんな目。



けれど──私は、その真意に気づけないまま。


「……ずる」



低くそうつぶやいて、彼は私を強く抱きしめた。



そして、また深くキスを落とす。



唇、肌、指先、そして鼓動までも。



「好き」と言えないまま、ただすべてで確かめ合った。



心は、もうとっくに恋に落ちているのに。



でも、言葉にしてしまえば何かが壊れそうで。


だから、口にはできなかった。


理屈も、約束もない関係。



それでも、彼の温もりを求めてしまう。




この夜を境に始まった日々が、



甘くて、苦しいものになるなんて──
 


私はまだ、知らなかった。






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