【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
「黒瀬さん!この前のプレゼン資料チェック、ありがとうございました!」
 



明るい声が、給湯室の方から聞こえてきた。



ふと視線を向けると、若手の女性社員が黒瀬に向かって、嬉しそうに話しかけている。



「まあまあ、よくできてたな、あれ」



黒瀬は気だるげに返しながらも、どこか柔らかい声色だった。



「ほんとですか!?やった〜!頑張ったかいありました。じゃあ今度、ご飯奢ってください!」

「……は?調子のんな。俺、多忙なんで。無理ですー」



そう言いながらも、ふたりして笑い合っているのが聞こえる。



そのやり取りを耳にした瞬間、有紀は思わず立ち止まっていた。
 

自分でも、なんで足が止まったのかわからない。



ただ──



(……楽しそう)



そんな言葉が、頭に浮かんでいた。



胸の奥が、じわっと熱を帯びていく。



──なに、これ。



胸の奥に広がっていくこの感情の正体に、有紀自身が驚いた。



嫉妬、なのかもしれない。



(前だったら、こんなことで立ち止まったりしなかったのに)



黒瀬のまわりに女性社員がいて、楽しげに会話している姿なんて、これまでも何度も見てきた。


軽口がうまくて、気配り上手で、仕事もできる。


──黒瀬くんがモテるのなんて、前から知ってた。



なのに今は、その当たり前の光景すら、胸をざわつかせる。



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