【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
誰かと笑い合ってる黒瀬を目にするたびに、


自分の知らない“黒瀬尚”を見た気がして、


胸の奥に、名前のつけられないモヤがじわじわと溜まっていく。



(……夜は、あんなに甘いのに)



彼の腕に包まれていたときの声。


肌をなぞった指先の熱。


触れた場所すべてが火照るようで、
あの夜のぬくもりは、まだ身体の奥に残っている。



確かに、愛おしそうに抱きしめられたはずなのに──



昼間の黒瀬は、“ただの同僚”として、
何ごともなかったかのように有紀の前を通り過ぎていく。



そのたびに、
心のどこかで、何かが削れるような感覚に襲われる。



(……こんな関係、だめなのに)



言葉にもできない不安と、



それでもなお、彼のぬくもりを求めてしまう自分がいる。



ズルくて、みっともなくて、情けない。
それでも──



黒瀬に触れたあの熱を、どうしても忘れられない。



触れられるたびに、期待してしまう。



ほんの少しの優しさが、意味のあるものだと錯覚してしまう。



そんな自分をどこかで責めながらも、



有紀の胸には、静かに、でも確かに広がるモヤだけが
なかなか晴れずに居座っていた。



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