【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
「ありがとう……すごく、嬉しい」
「ちゃんと休憩しなよ。仕事に一生懸命なの、佐伯のいいところだけど、自分のことも労わらないと」
「……うん」
優しい言葉がじんわり心に沁みてきて、
ちょっとだけ、目元が緩んだ。
肩の力も抜けて、ほんの数秒だけ、穏やかな時間が流れる。
そのときだった。
「わぁ……」
隣のデスクから、田中美紅がにこにこしながら身を乗り出してきた。
「ほんと、高峰さんと有紀さんって、すごくお似合いですよね〜!空気感がめちゃくちゃ良い感じです!」
「えっ!?ち、ちがっ、そういうのじゃないよっ!」
思わず立ち上がって否定した有紀に、田中は「え〜?そう見えるのに〜」とくすくす笑っている。
「……だってさ、佐伯」
高峰は困ったように眉を下げ、それでも楽しそうに言った。
「もぉ…からかわないでよ……」
耳がほんのり赤くなっているのが、自分でもわかった。
──そして、その光景を、静かに目にしていた人がひとり。
コピー機の横に立っていた黒瀬が、無言のまま手にした書類を持ち直し、背を向けて歩き出す。
その表情は、誰にも見えなかった。
けれど、さっきのやりとりは、全部――彼の視界の中にあった。