【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜

穏やかな関係



午後のオフィス。


外は陽射しが眩しいのに、心の中には晴れ間がなかった。


(なんか、疲れた……)


会議が終わってからずっと、集中できないままキーボードを打ち続けている。



ふと、画面が霞んで見えた。


──川上さんの明るい声。


──黒瀬くんの低く笑う声。




(……もう…ちゃんと、仕事しなきゃ)


そう思うのに、心がついてこない。


「佐伯」


ふいに名前を呼ばれて、はっと顔を上げる。




高峰が、デスクの横に立っていた。


「え、あ、高峰くん……」


「大丈夫?なんか、疲れてるように見えるけど」


そう言って、手に持っていた紙カップを差し出してくる。


「……あ、それ…」

「コーヒー。コンビニのだけど、ミルク砂糖多めのやつ。たしかブラック苦手だったよね」

「……覚えてたの?」

「そりゃ、覚えてるよ」


そう言って、ふっと笑う。


その優しい笑みを見ていたら、胸の中にあった重いものが少しだけ、ほどけていく気がした。

< 110 / 172 >

この作品をシェア

pagetop