【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
明かりを落とした寝室。


カーテンの隙間から差し込む街灯の光が、寄り添う二人の影を静かに浮かび上がらせていた。


「……っ、あっ、くろ……せくん……」



肌が触れ合うたびに、火照った身体が小さく震える。


黒瀬の指が髪をすくい、首筋をやさしくなぞった。


「……ほんと、かわいい」


低くて甘い声。


くすぐるように耳元へ落ちたその囁きに、胸の奥がぎゅっとしぼられる。





——昼間、職場では目も合わさなかったくせに


夜になると、こんなふうに優しく触れて、甘い言葉をくれる。

その矛盾に、快感のなかでちくりと胸が痛んだ。



「今日……高峰と、何話してたの」


「…えっ?」



思わぬ名前に、思わず息を飲んだ。


まさか、見られてたなんて…。



「……ん…ったいした、ことじゃ…っ…」



言いかけたその唇を、黒瀬がふいに塞いだ。


深く、強く、感情を押しつけるようなキス。


彼の指が有紀の敏感な場所へと滑り込み、じんわりと熱を広げていく。


「……ん、ふ……っ」



くちづけの合間に漏れる甘い吐息。


そのたびに、黒瀬の指先が少しずつ深くなる。


「……楽しそうだったけど?」


耳元で囁かれた声が、かすかに拗ねていた。


「っ……なんで、そんなこと……聞くの」



問いかけたつもりの言葉は、熱と重なってすぐに消えていく。



「最近……俺の前じゃ、あんな顔しないのに」



ぽつりと落ちた言葉。


どこか寂しさを滲ませた声音に、有紀の胸が軋んだ。


そのまま、黒瀬の動きが強くなる。



絡めた指に力が込められ、まるで言葉の代わりに想いをぶつけるように、何度も求められる。



「や、あ……ん……っ」



言葉にならない声がもれる。



答えたくても、答えさせてくれない。



(……聞いたくせに、ズルい)



そんな想いさえ、黒瀬の熱に溶かされていく。



「……やだ、今日……ちょっと…っ…」



かすれるように言うと、黒瀬が動きを止めた。



「……やだ?」



ふっと、笑って、有紀の頬に唇を落とす。



「……やめる?」



その囁きが、たまらなく優しくて、苦しかった。


「……も…っ、ズルい…くろせくん」


「うん。……ズルい」



あっさり認めたあと、また深く唇を重ねてくる。



切なくて、やさしくて。
でも、どこか拗らせた想いが滲んだキスだった。





< 114 / 172 >

この作品をシェア

pagetop