【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
有紀は、感情が顔に出やすい女だった。


嬉しい時は笑うし、

照れるとすぐ赤くなる。

怒れば睨むし、

悩めば表情が曇る。



──でも、最近の彼女は、なにも見せなかった。


いや、見せないようにしていた(・・・・・・・・・・・)…?

 

息を飲んだ俺を、高峰は逃がさないように見据えてきた。


「──黒瀬。お前、佐伯のこと、どう思ってるんだ?」



その問いに、即答できなかった。




“好きだ”って、


ずっと口に出して言えなかった。



あいつが高峰に向ける、やわらかな声や、
ふっと力の抜けた笑顔、気の抜けた仕草。


それが、俺には向けられない“特別なもの”に見えて——
 


その光景を目の当たりにするたびに、
心の中ではどうしようもない、嫉妬と不安が入り混じる。


だから、
想いよりも先に“身体”でつなぎとめようとした。





触れれば応えてくれる。


有紀の体温も、声も、視線も、全部自分のものにできたような気がした。


本当は、心が欲しかったのに。


側にいてほしくて、ズルい方法で繋ぎ止めていた。
 

 
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