【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
黒瀬尚side | ずっと願っていた"本当"
有紀が、外回りで社外に出た後だった。
「──なあ、ちょっと話ある」
フロアに戻ろうとしたとき、不意に背後から声をかけられた。
振り返ると、高峰だった。
目が合った瞬間、空気の温度が変わるのを感じる。
いつもの柔らかさはなかった。
声は低く、視線は真っ直ぐで、冗談の余地が一切ない。
──これは、ただ事じゃない。
「……なんだよ」
「少しでいい。空いてる会議室、あるだろ」
そのまま言葉を挟む隙もなく、歩き出される。
ドアが閉まる音がやけに重く響いた。
*
ドアが閉まると、すぐに言葉が飛んできた。
「──佐伯と、お前。どういう関係なんだ」
唐突すぎる問いに、言葉が詰まる。 けれど高峰の目は一切揺れていなかった。
「……どうって」
「付き合ってる?」
一瞬、息が詰まった。
(……付き合ってる、とは……言えない)
“好き”だとも、“付き合おう”とも、誰も言っていない。
ただ、互いの部屋を行き来して、夜を共にしている。
私物も置き合っている。
けれど、それだけだ。
———名前のない、曖昧な関係。
「……付き合ってねぇよ」
喉の奥から搾り出すように、そう答えた瞬間、高峰の顔がわずかに強張った。
「──そうかよ」
低く落ちたその声に、怒りの色が滲んでいた。
「給湯室で佐伯が泣いてた」
「……は?」
「俺の前で。こらえきれずに、ぽろぽろ泣いてた」
一気に心臓が軋む。
「……なんで……」
「理由は聞いてない。でも、あれはお前のことで泣いてた」
「……そんな、まさか……どういう──」
「どういうもなにも、そういうことだよ。……ちゃんと、見てなかったの?」
返されたその一言が、深く刺さる。
(──いつから、有紀は泣くことすら隠せるようになったんだ)
「──なあ、ちょっと話ある」
フロアに戻ろうとしたとき、不意に背後から声をかけられた。
振り返ると、高峰だった。
目が合った瞬間、空気の温度が変わるのを感じる。
いつもの柔らかさはなかった。
声は低く、視線は真っ直ぐで、冗談の余地が一切ない。
──これは、ただ事じゃない。
「……なんだよ」
「少しでいい。空いてる会議室、あるだろ」
そのまま言葉を挟む隙もなく、歩き出される。
ドアが閉まる音がやけに重く響いた。
*
ドアが閉まると、すぐに言葉が飛んできた。
「──佐伯と、お前。どういう関係なんだ」
唐突すぎる問いに、言葉が詰まる。 けれど高峰の目は一切揺れていなかった。
「……どうって」
「付き合ってる?」
一瞬、息が詰まった。
(……付き合ってる、とは……言えない)
“好き”だとも、“付き合おう”とも、誰も言っていない。
ただ、互いの部屋を行き来して、夜を共にしている。
私物も置き合っている。
けれど、それだけだ。
———名前のない、曖昧な関係。
「……付き合ってねぇよ」
喉の奥から搾り出すように、そう答えた瞬間、高峰の顔がわずかに強張った。
「──そうかよ」
低く落ちたその声に、怒りの色が滲んでいた。
「給湯室で佐伯が泣いてた」
「……は?」
「俺の前で。こらえきれずに、ぽろぽろ泣いてた」
一気に心臓が軋む。
「……なんで……」
「理由は聞いてない。でも、あれはお前のことで泣いてた」
「……そんな、まさか……どういう──」
「どういうもなにも、そういうことだよ。……ちゃんと、見てなかったの?」
返されたその一言が、深く刺さる。
(──いつから、有紀は泣くことすら隠せるようになったんだ)