【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
高峰が、まっすぐな声で言った。


「……俺は、佐伯が好きだ」


その言葉が胸に響いた。


「だから、ちゃんと気持ち、伝えた。
……フラれたけどな」


「は…?」


(──フラれた?)




思わず顔を上げた。


「それって……有紀は、お前を──」
 
「選ばなかった。お前のそばにいた。それが、どういう意味かわかる?」

「っ」





(……俺、だったんだ)


信じきれなかっただけで、
あいつはもう、とっくに俺を選んでた。


怖くて、踏み出せなかったのは──俺のほうだった。


その俺に向けて、高峰が告げる。



「……遊びで続けてるなら、今すぐやめろ」


低く、真剣な声だった。


「本気なら、ちゃんと向き合え。気持ちを伝えろ。迷わせんな」


真っ直ぐ見据える瞳を、静かに見つめ返した。


「──曖昧なままにするなら、俺が奪いに行く」


その目に、冗談は一切なかった。
過去を断ち切って、もう一度挑む覚悟の目。

 
何も言い返せなかった。
でも、胸の奥で何かが確かに動き出していた。

 
有紀の手の温度も、
あの夜に見せた不安げな目も──
まるで、好きだと訴えているような、甘い瞳も、
全部、本物だった。



それを信じる勇気を持てなかった俺が、
一番、あいつを不安にさせてたんだ。
 



ようやく触れた、本当の想いが、
胸の奥で、熱を持って揺れていた。



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