【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
「……黒瀬くん」


その名前を呼ぶと、彼は小さく笑った。


あのときのように、逃げずに見つめ返してくれる。


「これからは、言葉にするよ。ちゃんと伝える」

「……うん」

「お前のこと、大事にする。絶対に」



ああ、こんなふうに思える夜が、
ほんとうに来るなんて、思ってなかった。


“誰のものでもなかった関係”が、
ちゃんと、ふたりのものになった。


それだけで、もう、何もいらないと思える。

有紀は黒瀬の胸にそっと顔を戻し、
服越しにその音を聴く──心臓の音。鼓動のリズム。



肌を重ね合わなくてもわかる温度。



もう、不安に振り回されたりしない。


不確かな関係に名前をつけられなかった自分にも、もう戻らない。


これが、ふたりの“始まり”の夜。


はじめて、何もせずにただ眠る夜が、
いちばん深く、彼と繋がった気がした。


そのぬくもりを胸の奥に灯しながら、
有紀はそっと、目を閉じた。



静かに流れる夜の中で、ふたりの鼓動が、静かに重なっていった。







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