【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
「なあ、有紀」

「ん?」

「今日のお前、どこがいちばん可愛かったか言っていい?」

「え……?」

「プレゼンのときに、真剣にメモ帳にめっちゃ細かくメモとってたとこ。あれ、見てて惚れ直した」

「えっ、え……そこ……?!」

「あと、斉藤に相談されてるとき、ちょっとだけ困った顔してたのも可愛かった。あの眉の角度が好き」

「ちょ、ちょっと待って。なんでそんな細か……!」

有紀が笑いながらつっこむと、黒瀬は満足そうに頷いた。

「だって好きな女のこと、見てないわけないじゃん。朝から晩までずっと、どこ見ても可愛いんだから困る。俺の集中力返してほしい」

「……そんなふうに見えなかったのに。仕事中、冷静そうだったのに」

「……俺の頭ん中、8割くらい有紀でいっぱいなんですけど?」



そんなことを言いながらも、今日の黒瀬は誰よりも仕事をさばいていた。



リーダーとして全体のスケジュールを確認しながら、必要な指示を的確に出し、チームの進行をしっかりとコントロールする姿はまさにスマート。


斉藤や川上から質問されても、無駄なく答えを返し、端的で論理的。
ときどき笑顔も交えながら、空気をほどよく和ませる余裕さえあった。


(……あの完璧さで、頭の中は“8割わたし”だったって……)



そう思うと、有紀の胸の奥がじんわり熱くなった。


黒瀬の隣で同じ空間にいても、まさかそんな想いが隠れていたなんて気づけるはずもない。


でも──



「……俺なりに、バレないようにがんばってるんです。これでも」



黒瀬は照れたように笑って、有紀の肩に額を軽くあずけてきた。



その仕草が甘くて、無防備で、まるで昼間の完璧な彼とは別人みたいで。



(……もぉ…このギャップ、ずるいってば)



心の奥で小さくそう思いながら、有紀はそっとその頭を撫で返した。


< 137 / 172 >

この作品をシェア

pagetop