【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
その後のやり取りは、すべてがスムーズだった。
現場も見せてもらえることになり、提案の方向性も定まった。
有紀がいなかったら、正直ここまで形になってなかったと思う。
帰りの車内。
運転席に座る俺の横で、有紀は助手席のシートにふっと身体を預けた。
「ふぅ〜」
気が抜けたようなその仕草に、仕事中ずっと気を張っていた彼女の緊張がようやくほどけたのが伝わる。
その無防備な様子に、胸の奥がざわついた。
「……ほんと怖かったけど……社長さん、聞いてたよりいい人でよかったぁ…」
そう言って笑う顔は、いつもより少し幼く見えた。
(……マジか。あの堅物が、“いい人”ね)
思わず、小さく吹き出す。
「ふっ……」
「えっ、黒瀬くん、なに笑ってるの?」
ぽかんとした顔で見上げてくる。
(……なんだろ、これ)
自分の中で何かが変わりはじめてる。
それは、最初にあの残業していた姿を見たときよりも、もっと確かな実感だった。
一生懸命で、不器用で、でも信じて任せられる。
クライアントにじゃなくて、俺がそう思ってる。
そんな感情は、今まで仕事仲間に抱いたことなんてなかった。
「……お前、すごいな」
無意識に、そう言っていた。
有紀はきょとんとしたまま、俺を見つめる。
「え?なにが?」
(ほんと、気づいてないんだな)
そんな反応さえ、なぜか可笑しくて、 でも少しだけ、胸の奥があたたかくなる。
──たぶんこのときの俺は、まだ“惹かれてる”って言葉を使うには至ってなかった。
けど、間違いなく“気になっている”という確かな気持ちが、
ゆっくりと、静かに、胸の奥で芽を出し始めていた。
それは気づかないふりをしても、どんどん広がっていくものだった。
現場も見せてもらえることになり、提案の方向性も定まった。
有紀がいなかったら、正直ここまで形になってなかったと思う。
帰りの車内。
運転席に座る俺の横で、有紀は助手席のシートにふっと身体を預けた。
「ふぅ〜」
気が抜けたようなその仕草に、仕事中ずっと気を張っていた彼女の緊張がようやくほどけたのが伝わる。
その無防備な様子に、胸の奥がざわついた。
「……ほんと怖かったけど……社長さん、聞いてたよりいい人でよかったぁ…」
そう言って笑う顔は、いつもより少し幼く見えた。
(……マジか。あの堅物が、“いい人”ね)
思わず、小さく吹き出す。
「ふっ……」
「えっ、黒瀬くん、なに笑ってるの?」
ぽかんとした顔で見上げてくる。
(……なんだろ、これ)
自分の中で何かが変わりはじめてる。
それは、最初にあの残業していた姿を見たときよりも、もっと確かな実感だった。
一生懸命で、不器用で、でも信じて任せられる。
クライアントにじゃなくて、俺がそう思ってる。
そんな感情は、今まで仕事仲間に抱いたことなんてなかった。
「……お前、すごいな」
無意識に、そう言っていた。
有紀はきょとんとしたまま、俺を見つめる。
「え?なにが?」
(ほんと、気づいてないんだな)
そんな反応さえ、なぜか可笑しくて、 でも少しだけ、胸の奥があたたかくなる。
──たぶんこのときの俺は、まだ“惹かれてる”って言葉を使うには至ってなかった。
けど、間違いなく“気になっている”という確かな気持ちが、
ゆっくりと、静かに、胸の奥で芽を出し始めていた。
それは気づかないふりをしても、どんどん広がっていくものだった。