【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
*
夕食を食べ終え、片付けを済ませると、ふたりはソファに並んで腰を下ろす。
黒瀬が自然に腕を伸ばし、有紀の肩を自分の方へ引き寄せた。
「……ほんと、黒瀬くんって料理上手だよね。今日も美味しかった。私なんて、サラダ盛ったくらいしかしてないけど」
「それで十分」
黒瀬はあっさりと言って、有紀の髪を指で弄ぶ。
「有紀が横にいれば、それでいい」
耳元に落ちた低い声。
吐息がかすかに触れただけで、耳の奥まで熱くなり、有紀は思わず肩をすくめる。
そんな反応を見て、黒瀬が満足そうに笑った。
「……な、なに」
「いや。まじで、すぐ顔に出るなって思って。かわいいなって」
からかうようでいて、どこか本気の声音。
抗議する余裕もなく、頬がじんわり赤くなる。
すると、黒瀬は、ふと何かを考え込んだ後、真面目な声音になった。
「有紀」
低く落ち着いた声で名前を呼ばれて、何故かドキッとしてしまう。
「な、なに……?」
「……さっきの続きだけど」
「え?」
「バレても、俺は困んねぇ。むしろ言いたいくらい。有紀は…俺のだって」
目を逸らさずに言われ、有紀の心臓が大きく跳ねた。
「で、でも……周りの目とか……」
「気になんのもわかるけど……。
俺は、」
一瞬言葉を切り、彼はそっと有紀の頬にかかる髪を指先で払う。そのまま顎を軽く持ち上げて、まっすぐに視線を絡めた。
「有紀が、俺にとって大事な人だってことを周りにも言いたい」
ストレートな言葉に、胸の奥がじんと温かくなる。
「……く、黒瀬くん……っ」
小さく呟いた途端、黒瀬はくすりと笑い、唇を重ねてきた。
優しく触れるだけのはずが、すぐに深さを増していく。
「ん……っ」
思わず漏れた声に、自分でも顔が熱くなる。
唇が触れるたびに、かすかな吐息が混ざり合い、胸の奥が熱で痺れる。
黒瀬の呼吸が近くにあることが、こんなにも甘くて、幸せで――。
触れ合った唇の熱が少しずつ溶け合い、有紀は思わず黒瀬の胸に手を添えた。
掌の下で感じる心臓の鼓動が、自分の高鳴りと同じ速さで打っている気がする。
「……っふ…黒瀬くん……っ」
息が足りなくて、けれど離れたくない。
ただひたすらに、その温もりと熱を求めてしまう。