【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
ソファに身を寄せ合い、甘いキスを交わしたあと。


黒瀬はゆっくり唇を離し、有紀の頬に手を添えたまま、じっと見つめてきた。


「えっと…、な、なに……?そんな顔で」


「……有紀。俺さ」


低く落ち着いた声色。



冗談でも軽口でもないことが、すぐにわかった。


「俺たちのこと…隠すのも、遠慮すんのも、正直もう……限界」


「えっ……」


「堂々と言えるような関係になりたい」


一瞬、息が止まった。


頭が真っ白になる。


「堂々と言える関係……?」

「そう」


 そして、黒瀬は一拍置いた後、真剣な眼差しで言葉を重ねた。



「……結婚しよう。有紀」


「――えっ……?」


思考が追いつかず、有紀は瞬きを繰り返す。


今、なんて言った? 結婚……? 



頭の中でその言葉がぐるぐると響き渡る。


「けっ……こん……?」


声が震え、胸の鼓動が乱れる。


自分の耳がおかしいんじゃないかとすら思った。


けれど、黒瀬の瞳はまっすぐで、迷いがなくて。冗談なんかじゃないことが一瞬で伝わってきた。


「俺……お前の全部が好きだ」


真っ直ぐに言葉を重ねる黒瀬に、有紀の心臓がぎゅっと掴まれる。


「付き合ってからもさ……日に日に、その想いが強くなってく。
一緒にいると、安心できて、楽しくて。気づいたら……これから先もずっと、一生一緒に生きていきたいって思うようになった」


「黒瀬、くん……」


「だから結婚しよう。有紀。これからも、ずっと…俺のそばにいて欲しい」


熱を帯びた瞳に捕まえられ、有紀の胸がいっぱいになる。


———付き合う前は。お互いの気持ちが見えなくて、身体だけを重ねていた。好きなのに、気持ちを伝えられなくて――
 

だから、黒瀬にちゃんと“好きだ”って伝えてもらえた時は、本当に嬉しかった。

ずっと“彼氏彼女”でいられたら十分だと思っていたのに。



(そんなふうに真っ直ぐに言われたら……)


思わず、涙が滲む。


「……このタイミングで……黒瀬くん、ほんと……ずるい。心の準備とか、まったくしてなかったのに……」


「俺は有紀が欲しいから。一秒でも早く、全部俺のもんにしたい」



そっと抱きしめられる。
 


その腕の温もりに包まれて、有紀は小さく頷いた。


「……はい」

「はい?」

「私で、よければ……」


途端に黒瀬が、嬉しそうに破顔する。



そして、さらに強く抱きしめられた。


「有紀じゃなきゃ無理」

「……っ」

「……絶対、幸せにする」


耳元で囁かれたその声に、有紀の胸はじんと熱くなり、幸せでいっぱいに満たされた。
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