【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
———数か月後。
「――黒瀬くん、これお願いしてもいい?」
何気なく口にした瞬間、ソファに寝転んでいた尚が、ぴたりと動きを止めた。
「……お前も……黒瀬だろ?」
むくりと起き上がり、じとーっとした視線を投げられる。
有紀は思わず口を押さえた。
「あっ……! そうだった……」
――黒瀬有紀。
まだ全然慣れない名字。
役所で手続きのとき、紙に書いた自分の名前に、まだ実感が湧かなくて。
けれど、呼ばれるたびに、心の奥がくすぐったくなる。
本当に、この人の妻になれたんだって。
「ご、ごめん。つい、癖で……。黒瀬くん呼びが長かったから…」
「ったく。俺、旦那だぞ。名字で呼ばれるとか、普通に距離感じるんですけど?」
拗ねたように眉を寄せる尚に、有紀は思わず笑ってしまう。
「ちゃんと名前で呼べ」
「……ふふっ。うん、ごめんね?
……尚くん」
まだ呼び慣れない名前を口にした途端、頬が熱くなる。
尚は、その様子に、満足げに頷いた後――そのままぐっと有紀の腕を引き、ソファに押し倒した。
「……っ」
そして——あっという間に唇を塞ぐ。
有紀は、驚いて目を見開くが、すぐに尚の唇の熱と、柔らかな感触に溶かされていった。
軽く触れるだけじゃない。
甘くて、少し意地悪なキス。
「んっ……黒瀬く……」
「ほら、また」
「あっ、ごめ……っ」
「……練習が必要だな」
唇が離れると、尚は呆れたように息をつき、けれど、愛おしげに有紀を見下ろす。
髪に指を滑らせ、そっと撫でるその仕草に、有紀の胸がじんと温かくなる。
優しい指先が髪をなぞるたび、心臓の鼓動が速くなった。
「有紀」
「ん?」
「……愛してる」
「っ……」
結婚してからも。
相変わらず、尚から囁かれる言葉は、甘くて、不器用で、時に意地悪だけど、すべてが深くて、温かい愛情に満ちていた。
こんなにも真っ直ぐに、自分だけを見てくれる人と、私は夫婦になれたんだ——
そう思うと、胸の奥がじんと熱くなる。
この人の隣にいることが、何より自然で、安心できて、幸せ。
――これからも、ずっと。
この人と一緒に、笑って、ぶつかって、支え合いながら、二人で未来を紡いでいきたい。
そう心に誓いながら、有紀は、そっと抱きしめてくるその背中に腕を回した。
(fin.)
「――黒瀬くん、これお願いしてもいい?」
何気なく口にした瞬間、ソファに寝転んでいた尚が、ぴたりと動きを止めた。
「……お前も……黒瀬だろ?」
むくりと起き上がり、じとーっとした視線を投げられる。
有紀は思わず口を押さえた。
「あっ……! そうだった……」
――黒瀬有紀。
まだ全然慣れない名字。
役所で手続きのとき、紙に書いた自分の名前に、まだ実感が湧かなくて。
けれど、呼ばれるたびに、心の奥がくすぐったくなる。
本当に、この人の妻になれたんだって。
「ご、ごめん。つい、癖で……。黒瀬くん呼びが長かったから…」
「ったく。俺、旦那だぞ。名字で呼ばれるとか、普通に距離感じるんですけど?」
拗ねたように眉を寄せる尚に、有紀は思わず笑ってしまう。
「ちゃんと名前で呼べ」
「……ふふっ。うん、ごめんね?
……尚くん」
まだ呼び慣れない名前を口にした途端、頬が熱くなる。
尚は、その様子に、満足げに頷いた後――そのままぐっと有紀の腕を引き、ソファに押し倒した。
「……っ」
そして——あっという間に唇を塞ぐ。
有紀は、驚いて目を見開くが、すぐに尚の唇の熱と、柔らかな感触に溶かされていった。
軽く触れるだけじゃない。
甘くて、少し意地悪なキス。
「んっ……黒瀬く……」
「ほら、また」
「あっ、ごめ……っ」
「……練習が必要だな」
唇が離れると、尚は呆れたように息をつき、けれど、愛おしげに有紀を見下ろす。
髪に指を滑らせ、そっと撫でるその仕草に、有紀の胸がじんと温かくなる。
優しい指先が髪をなぞるたび、心臓の鼓動が速くなった。
「有紀」
「ん?」
「……愛してる」
「っ……」
結婚してからも。
相変わらず、尚から囁かれる言葉は、甘くて、不器用で、時に意地悪だけど、すべてが深くて、温かい愛情に満ちていた。
こんなにも真っ直ぐに、自分だけを見てくれる人と、私は夫婦になれたんだ——
そう思うと、胸の奥がじんと熱くなる。
この人の隣にいることが、何より自然で、安心できて、幸せ。
――これからも、ずっと。
この人と一緒に、笑って、ぶつかって、支え合いながら、二人で未来を紡いでいきたい。
そう心に誓いながら、有紀は、そっと抱きしめてくるその背中に腕を回した。
(fin.)