【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜

【番外編】もう、ずっと前から。 黒瀬尚side

*ひとこと感想やいいねありがとうございます(*^^*)

本編「”好き”が降り注ぐ毎日」の少し前くらいの時間軸のエピソードです。








有紀と付き合い始めて、ちょうど一ヶ月を過ぎた頃。


恋人としての彼女に惹かれているのはもちろんだが――“仕事人としての彼女”にも、本気で感心させられる。


今日もチームで資料作成の打ち合わせ。


俺はリーダーとして方向性を示し、細かい部分はメンバーに任せてる。


有紀は、その中で自然に補佐役のように動いていた。


「斉藤くん、このグラフの見せ方すごく分かりやすいね。ただ、ここをもう少し具体例にできると、もっと説得力が出ると思う」


「え、あ、たしかに…! そうですね!」



斉藤の強みを拾い上げて、次のステップを示す。



有紀に微笑まれながら、褒められた斉藤が、妙に嬉しそうに顔を赤らめているのは、ちょっとだけ気に障る…。



「川上さんはレイアウト得意だよね。前に作った資料、すごく見やすくて、びっくりした。このページのデザインも、お願いしてもいい?」


期待を込めた笑顔でそう言われ、川上は一瞬驚いたように瞬きをした。


けれどすぐに――



「はい! やってみます!」



弾む声で答えていた。




……川上。


チームメンバーが発表された後、最初の頃は俺に気があるような態度をとっていた。視線もやたら多かったし、やけに距離を詰めてくることもあった。


正直、やりづらかった。


俺はリーダーとして公平に接するべきだし、なにより有紀に誤解されたくなかった。だから、適当にかわしてきた。


けれど今は違う。


有紀と一緒に資料を作り、営業に出ていくなかで、“黒瀬リーダーの隣にいたいから”ではなく、“いい仕事をしたいから”と、意識そのものが変わってきている。


その変化は間違いなく、有紀のおかげだ。


彼女は後輩たちの得意分野を見つけては伸ばし、自然に空気を前へと回していく。


押しつけじゃなく、一緒に頑張ろうとする姿勢で。



……ほんと、すげぇよな。


俺があえて深入りしなかった部分を、有紀は自然にカバーしてくれる。しかも、そのやり方がちゃんと人を動かす。


< 163 / 172 >

この作品をシェア

pagetop