恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
意地悪な笑顔と、変わっていく心
「……ん……」
ぼんやりとした意識の中、有紀はゆっくりと目を開けた。
柔らかなシーツの感触。ほんのりと残るぬくもり──それから、背中に回された腕。
(……え?)
思わず視線を向けると、隣には、寝息を立てる黒瀬の姿があった。
少し乱れた髪と、無防備な表情。その顔を見た瞬間、昨夜の記憶が一気に押し寄せてくる。
(……夢、じゃなかったんだ)
ホテルの一室。
名前を呼ばれたこと。触れられた場所。重ねた唇。
乱暴なくせに、どこか優しかった手つき──
(わたし、黒瀬くんと……)
頭も、腰も重い。でも、それ以上に胸の奥がざわついて、少しだけ息苦しかった。
(どうしよう……会社で、どんな顔すればいいの)
後悔しているわけじゃない。
でも、現実味がなくて、うまく感情の整理がつかない。
ただ、彼の隣で朝を迎えたという事実だけが、妙にしっくりと胸に落ちていた。
そのとき。