恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
「えっ、ちょっと……!」

「どこ行くの?」

「シャワーでも浴びようかなって……」

「ふーん」


一拍置いてから、ぽつりと。


「一緒に入る?」


 ニヤッと笑うその顔に、反射的に枕を手に取った。


「入らないし!」

「いてっ!」


軽く枕をぶつけると、黒瀬は笑いながら顔を手で覆った。


気まずさをごまかすように、バスローブを羽織り洗面所へと足を向ける。



けれど鏡を覗き込んだ瞬間──



「……なっ……!」



思わず声が漏れる。

 
首筋に、くっきりと残された赤い痕。


「……これ……!」


すぐに、誰の仕業か察しがついた。慌てて首元を手で隠した、そのとき。


「……あれ、気づいた?」


後ろから、ひょこっと黒瀬が顔を出す。悪びれる様子がまったくないとこをみると、確信犯。



「せめて、見えないとこにしてよ!」

「……ってことは、つけるのはOKなんだ?」


にやりと笑う黒瀬に、有紀の顔が一気に真っ赤になる。



「ちがっ……! そういう意味じゃなくて!」


(ほんと、もう……意地悪)



でも、鏡越しに見た彼の顔。



昨夜と同じく、どこまでも無防備で、やわらかく笑っていて──



(……ずるいな、ほんとに)



気づけばまた、胸の奥が少しだけ彼の方へ傾いていた。


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