恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜

気まずさと、隠せない温度


週明け、月曜の朝。


(落ち着いて。いつも通り、いつも通り……)


そう自分に言い聞かせながら、私はオフィスの自動ドアをくぐった。



けれど、胸の奥は朝からずっとざわついている。



(……会社で顔を合わせるの、初めて──黒瀬くんと、あの夜のあとで)



思い出すつもりなんてなかったのに、ほんの数秒の沈黙が、ふいに体温を引き戻す。


うっかり目が合ってしまったらどうしよう。


気まずそうな顔をされたら? 


逆に、何もなかったような態度だったら──


(もう、どっちも、嫌すぎる……!)



いつもと同じエントランス、同じ朝。
なのに、自分だけ異物になったみたいで、落ち着かない。



「おはようございます」


同僚たちに挨拶をすると、当たり前のように声が返ってくる。



その“変わらない日常”の中で、自分の心だけが浮いている気がした。


(……あっ)


奥のデスクにいるのは、黒瀬くん。


コーヒー片手に、誰かと他愛ない話をして笑ってる。


(……変わってない)



その空気も、表情も、仕草も。


──私だけ、意識しすぎてるのかもしれない。
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