恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜





オフィスを出ると、夜風が頬をなでていった。


仕事の熱がふっと抜けていくみたいで、なんとなく、歩く足もゆるやかになる。



駅の改札で合流した黒瀬くんは、ネクタイを緩めながら、いつもどおりの軽い口調で言った。



「なんか食いたいもんある?」

「……うーん。とくにこだわりはないかな」

「そっか。じゃあ、駅近くのイタリアンとかどう? 雰囲気はまあまあで、味は当たり」

「……グルメか」

「こう見えて、店探しは得意なんで」



歩幅を合わせて並んで歩く。


この距離にも、少しずつ慣れてきた。



──けれど、それがいいことなのかどうか、わからない。



慣れてしまえば、また何かを期待してしまいそうな自分が、ちょっと怖かった。

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