恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
届きそうな距離で
ホテルのフロントで、思わず顔を見合わせた。
「……一部屋?」
「はい……申し訳ございません。手違いで一部屋のみのお部屋のご予約になっておりまして……。あいにく、周辺ホテルも満室でして」
「そ、そっか。じゃあ、しょうがないか……」
高峰も困ったように苦笑いを浮かべる。
(よりによって、ダブルベッドの部屋って……)
ビジネスホテルの室内は、いたってシンプル。ソファもない。
荷物を置いて、一度深呼吸をしてから、有紀は先にシャワーを浴びた。
そのあと高峰がバスルームに向かい、出てきた頃には、室内には少しだけ緊張した沈黙が漂っていた。
「俺、床で寝るよ」
「えっ、だめだよ、私が床にする」
「いやいや、佐伯は女の子だし」
「でも、床に高峰くんが寝るなんて、無理無理!」
お互い一歩も譲らずに言い合って──気づけば、
どちらも床に布団を敷くような動作をしていて、目が合った瞬間、
「……誰もベッドに寝てないとか、意味わかんなくない?」
「たしかに」
顔を見合わせ、同時に吹き出す。
気が抜けたような笑いに、ほんの少しだけ、緊張がほどけた。
「じゃあ……端っこ、借りるね」
「うん、俺もこっちの端で」
そうして背中合わせに並んで寝転ぶ。けれど、当然ながら眠れるはずもない。
隣に高峰くんがいる──それだけで、心臓が落ち着かない。