【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜

デート当日、揺れる気持ち。

土曜日の朝。


窓の外は、少し曇りがかった空。


カーテンを開けて見上げたグレーの空は、まるで今のわたしの心みたいだった。

(ちゃんと、楽しもう)

(せっかくの、高峰くんとのデートなんだから)


心の中でそうつぶやいて、鏡の前に座る。


白いトップスに、淡いベージュのスカート。


普段より少しだけ華やかなメイク。


ストレートアイロンで軽く毛先を巻いて、髪もふわっと整える。


──黒瀬くんのことなんて、考えない。



今日だけは、ちゃんと“恋する女の子”でいたいと思った。



駅前に着くと、にぎやかな街の中で自然と背筋が伸びる。



少し緊張していたそのとき──



「佐伯」



名前を呼ばれて振り返ると、
スーツじゃない高峰くんがそこにいた。



落ち着いた雰囲気はそのまま。けれど、纏う雰囲気が、いつもよりもっと柔らかく見えて──



「ごめん、待った?」

「……ううん。わたしも今、来たとこ」


ちょっとだけ笑って答えると、
彼の視線がふと、わたしの髪元に向けられる。


「……今日の雰囲気、いつもと違うね」


「えっ……?」


「髪、巻いてるの珍しいし。……すごく似合ってる」



照れたように、少しだけ頬をかいて笑う高峰くん。


(……やだ、ちゃんと見てくれてる)



言葉の一つひとつに、胸がきゅっと鳴った。



会社の同僚じゃなくて、
“ひとりの女の子”として、ちゃんと見てもらえてる。



そんな気がして、自然と顔が熱くなる。



「……ありがとう」

「水族館、行こっか。前に好きって言ってたよね?」

「え、覚えててくれたの?」

「うん。珍しく、話してる時の目がきらきらしてたから」

「そ、そんなこと……!」


照れ隠しに笑って、思わず下を向く。
なのに、頬がにやけるのは止められなかった。



どうしてこの人は、こんなふうに自然に優しい言葉を言えるんだろう。



──ほんと、そういうとこが…


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