【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
ソファの背にもたれるように、黒瀬くんの腕の中に静かに沈んでいく。



その腕は、思っていたよりもずっと優しくて。


わたしの存在ごと、まるごと包み込むようなあたたかさだった。



服のすき間から忍び込んできた指先が、素肌をゆっくりなぞる。


その感触だけで、喉の奥から甘い声が漏れそうになる。



(……やだ。ちゃんと、覚えてる)



触れられた場所が、彼の記憶を辿るように熱を帯びていく。


首筋に触れた唇。そっと吸われるたびに、身体の奥がじんわりと疼いた。



まるで彼が、わたしの記憶のすべてを──思い出させようとしているみたいだった。


どこをどう触れたら、どんなふうにキスされたら、
わたしがどう感じて、どう壊れていくのか。



彼は知ってる。
わたしの身体も、心も、全部。



「……ん、あ……っ」



触れるたび、何度も心臓が跳ねる。


唇が重なり、舌がそっと内側をなぞってくる。


苦しくて、でも逃げられなくて。
むしろ──もっと欲しい、って思ってしまう。


キスが終わっても、彼の吐息は唇を離さず、
頬に添えられた手が、かすかに震えていた。


その震えさえも、わたしの胸をきゅっと締めつける。


「……かわいい」


耳元に落ちたその声に、心臓が跳ねた。


嘘でも、雰囲気でもいい。


いまはただ、その声に包まれていたかった。


「くろせ、くん……」


名前を呼んだ瞬間、彼の視線がわたしを捉えた。


「……ねえ、もっと……キスして?」


囁くようにそう言うと、黒瀬くんはわずかに息を呑んで──
すぐに、もう一度、唇を深く重ねてきた。



濃密なキス。舌と舌が絡み、呼吸さえ忘れるような熱。


気づけばわたしは、彼の首に腕を回していた。



その瞬間。



黒瀬くんの腕が、わたしの背と太ももにそっと回される。


「えっ……」


驚いた声を出す前に、身体がふわりと浮かび上がった。


「ソファだと……痛いだろ」


かすれた声でそう囁くと、黒瀬くんはゆっくりと寝室へ歩き出す。


その胸に抱かれながら、心臓の音がうるさいくらい響いていた。


静かに扉が開き、優しい灯りのもと、
彼の腕からそっとベッドへ下ろされる。


彼の手のひらのぬくもりが、ずっと身体に残っていた。



──このとき、わたしの心も身体も、
もう完全に、彼のものになりかけていた。



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