【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
そっと、有紀の髪を撫でる。



指先が触れるたび、肌に残る熱が思い出された。





その時、



ちいさく、布の上で何かが震えた。



──有紀のスマホが、ひとつだけ通知音を鳴らす。



「……」



黒瀬は視線をそちらに向けるだけで、手は伸ばさなかった。



画面は見えない。誰からの連絡かも、わからない。


けれど、すぐに名前が頭をよぎる。


(……高峰、か)


眠っている彼女の隣で、わずかに息を吐いた。
何かが胸に引っかかって、少しだけ、苦くなる。


でも、目を閉じた有紀は、何も知らずに穏やかな寝息を立てていた。


(……わかってる)


今すぐどうこうしようなんて、思ってない。





でも──


いつか、ちゃんと手に入れる。


“俺だけのもの”として、彼女の隣に立つ。


静かに目を閉じる彼女の頬に、そっと唇を寄せた。


「……はやく、俺だけをみろ。」



その呟きが、寝息に紛れて消えていく。



まるで告白にも似たその言葉を、有紀が聞いているはずもないと分かっていながら──



それでも、ただひとりの彼女に向けて、心から願うように囁いた。



抱きしめる腕に、自然と力がこもった。



眠る横顔は穏やかで、それがまた苦しくなるほど愛おしかった。






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