恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
戻る途中の廊下で、突然、肩を掴まれた。
「おまえ、顔真っ赤。大丈夫か?」
見上げると、そこには黒瀬 尚。
「……黒瀬くん?」
ふだんの皮肉屋な空気とは違って、今日はほんの少し真面目な顔をしていた。
「なんで……?」
「さっき席立ったあと、なんかフラフラしてるのみえたから。トイレ帰りの酔っ払い拾ってみた」
「拾われた覚えないし……」
そう言い返し、歩こうとするが足元がふらつく。
瞬間、黒瀬の腕が、さっと有紀の腰を支えた。
「──おい、やば。マジで酔ってんじゃん」
「べ、別に平気だし……」
「はいはい、見た目と真逆の自己申告ありがとうございます」
呆れたようにそう言いながらも、黒瀬の腕はやけにしっかりしていて、思わず少し寄りかかってしまう。
「……で、佐伯さんは。そんなに酔うほど何を考えてんの?」
「……なにも」
「嘘。わかりやすいんだよ、おまえ」
「うるさいな……」
「なあ、佐伯。──高峰のどこがいいの?」
「……は?」
急に核心を突くような言葉に、心臓が跳ねた。