【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
もし、タイミングが違っていたら
タクシーを降りて、
高峰の部屋に着いた瞬間——
(……え、綺麗……)
有紀は思わず息を呑んだ。
シンプルだけどセンスのいいインテリア。
グレーとウッド調を基調とした空間は、ホテルの一室のようで、でもどこか落ち着く。
観葉植物や間接照明の配置にも、几帳面な性格が滲んでいる。
(黒瀬くんちもすごかったけど……こっちも負けてない……)
「鍵、閉めてって……あと、水……冷蔵庫……」
ぽつぽつと呟きながら、フラフラとした足取りで、奥へ向かう高峰。
「ちょ、まって!寝る準備とか何もしてないでしょ……!」
慌てて後を追うと、彼はソファに倒れ込むようにして、目を閉じてしまった。
「……もぉ…ちゃんとしてよ……」
ネクタイが少しゆるんでいるのを見て、有紀はそっと手を伸ばす。
(……酔ってる相手にここまでするのって、どうなんだろ……でも)
指先でネクタイの結び目を緩める。
彼の喉元が覗くと、なんだか変にどきっとした。
(……普段あんなにしっかりしてるのに)
上着のボタンを外しながら、彼のスーツジャケットを肩から抜く。
シャツ一枚になった高峰は、ソファに横になり、眠そうに目を細めていた。
もう、ベッドまでは行けそうにない。
「……ごめん、佐伯……」
「ん?」
「ほんとは、かっこつけて飲んだだけ……。こんな、情けないとこ……佐伯に見せたくなかったのに」
「……ふふっ、なにそれ」
思わず、小さく笑ってしまう。
「十分かっこよかったよ。今日も。
……プレゼンも、全部」
「……そ?」
そう言って、またゆっくり目を閉じる彼。
ほんの少し口元が緩んで、安心したような寝顔になっていく。
(……こんな姿みせられたら、ほっとけないよ…)
黒瀬くんとは違う。
この人は、いつも周りに気を配って、完璧に見せて、でも時々抜けてて——
そういうところが、優しくて、好きだった。
「……水、冷蔵庫って言ってたよね」
小さくため息をついて、有紀はキッチンに向かった。