ハニートラップ
phase:29 侵犯
帰り際も、咲は自分の部屋から顔を覗かせて高峰くんを睨んでいた。
――その数分前。
俊平の家から私が戻るなり、高峰くんは唐突に俊平の部屋に面したカーテンを全開にした。
私が面食らって驚いていると、その窓際に引き込んで、
「……っ、」
キス。
柔らかい感触が少し離れて、濡れた吐息と一緒に甘い囁きが鼓膜を震わす。
「珠桜、口開けて。ちゃんと。」
――なんで?
考える前に唇を塞がれる。
わけもわからないまま薄っすら口を開くと、ぬるりと口付けが一段深くなる。
窓の向こうのカーテンが、僅かに揺れた気がする。
咲や俊平に見られるかもしれない。
そう思って、開いたままのドアと窓に視線を投げたのはほんの数秒だけ。
あっという間に脳を侵されて、高峰くんとのキスで一色になった。
――その余韻が抜けきらなくて、咲の顔が見られない。
赤らむ頬を隠す様にすぐに咲に背を向けて、高峰くんに続いて階段を降りていった。