ハニートラップ

phase:30 変質 side.高峰久哉


ゆるゆるとなだらかに冬が終わって、3月も半ばになっていた。


――珠桜は変わらず俺の隣にずっといる。


珠桜の家に行ったあの日から、俊平とは勝手に気まずくなったらしい。

話題に出ないのはもちろん、俊平のいる俺のクラスには一切寄り付かなくなったし、一緒にいるところも見なくなったから。



春なのか冬なのか、曖昧な肌寒さの帰り道を2人でダラダラと歩く。

「高峰くん、今日寄り道していい?
ドラッグストアに寄りたくて。」

珠桜は一応、笑顔。
何気なく視線を送ると、一瞬ぴくりと口端が攣って目が泳ぐ。

――まるで会話の正解を探してるみたいだ。


「いーよ。じゃ、こっちの道かな。」

冷えた手を取れば、ちゃんと握り返される。
噛んだ唇は緩むのを堪えていて、伏せた目には俺への好意が滲んでる。


それなのに、ずっと安心できない。

むしろ、珠桜を囲えば囲うほど、何かを取り零しているような気持ちになる。

――だから焦って、気付けばまた縛る。
この悪循環を手放せない。

< 106 / 162 >

この作品をシェア

pagetop