ハニートラップ
phase:30 変質 side.高峰久哉
ゆるゆるとなだらかに冬が終わって、3月も半ばになっていた。
――珠桜は変わらず俺の隣にずっといる。
珠桜の家に行ったあの日から、俊平とは勝手に気まずくなったらしい。
話題に出ないのはもちろん、俊平のいる俺のクラスには一切寄り付かなくなったし、一緒にいるところも見なくなったから。
春なのか冬なのか、曖昧な肌寒さの帰り道を2人でダラダラと歩く。
「高峰くん、今日寄り道していい?
ドラッグストアに寄りたくて。」
珠桜は一応、笑顔。
何気なく視線を送ると、一瞬ぴくりと口端が攣って目が泳ぐ。
――まるで会話の正解を探してるみたいだ。
「いーよ。じゃ、こっちの道かな。」
冷えた手を取れば、ちゃんと握り返される。
噛んだ唇は緩むのを堪えていて、伏せた目には俺への好意が滲んでる。
それなのに、ずっと安心できない。
むしろ、珠桜を囲えば囲うほど、何かを取り零しているような気持ちになる。
――だから焦って、気付けばまた縛る。
この悪循環を手放せない。