ハニートラップ
道一本曲がると、目の前に背の高い茂みが現れる。
ごちゃついた街に似合わない広い森林公園。
――あそこは珠桜と俺の本当の出会いの場。
いつか気づいてくれるかと、髪色はその時のまま、意味深なことを言ってみたけど、
珠桜は全く気付かない。
それどころか、一度も話題に出たことが――
「あ、ここ。」
珠桜の丸い目が、公園を見つけて更に丸くなっている。
何か思い出したみたいなその顔に、ドキリと胸に緊張が走った。
それが顔に出ていたのだろうか、珠桜が話そうとした口を閉じる。
「――ここが、何?」
ギリギリ平静を保って、静かに聞く。
珠桜の手を握る手に力が入った。
「あの公園で私、大怪我した人を助けたことがあって……っていう、話。」
――覚えてはいたのか。
ただ、俺だとは思っていない。
初めて珠桜の口からあの日のことを聞いて、嬉しかったり落胆したり、複雑な気持ちになる。