ハニートラップ

「――あ。」

後少しで珠桜の家に着くという時。
前を見ていた珠桜が足を止め、ぽかんと口を開けた。

不思議に思ってその視線の先を追うと、隣の家に入って行こうとしていた俊平と目が合った。


「おー、今帰り?」

俊平もわかりやすく“しまった”という顔をしている。

全く同じリアクションをする2人が、無性にムカつく。


「あー、うん。そうそう!そんなとこ。」

珠桜はチラッと俺の表情を伺ってから、俊平に向けて笑顔を作る。
俊平も同じように、そうした。

「そっか!――相変わらず上手くやってるようで、よかったな!」

カラ元気で下手くそな気遣い。
でも、珠桜は俊平に向かって子供っぽく顔を顰める。


「揶揄わないでよ、もう!」


――それから、ハッとしたようにこっちを見る。

その顔を見て、無意識に出しかけていた手をグッと握って引っ込めた。


一瞬の間に、珠桜は気まずそうに玄関ドアに走っていく。


「高峰くん、送ってくれてありがとう。
また明日ね!」

俺の顔も見ずにドアを開けて、家の中に消えていった。

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