ハニートラップ

バタンとドアが閉まる音がやけに耳に残って、俺と俊平の間に変な沈黙が流れる。

「――じゃ、俺も……」

「どうやったらさ、」

いそいそと家に入って行こうとした俊平が、俺の声に足を止めた。

俺の顔を見る俊平が、不思議そうな顔をしている。
多分俺は、笑っている。

「どうやったら、珠桜があんな風になるわけ?」

「――え?」

俊平が疑問符を浮かべて顰めた顔にまたムカついて。

喉の奥が妙にヒリつく。
は――、感情がぐっちゃぐちゃ。


見上げた珠桜の部屋の窓は、ほんの少しカーテンに隙間が開いている。
そこから人影が動いたのが見えた。

珠桜の手を掴むはずだった拳を、そっと解く。


相変わらず触れたいし、独占したい。

そして初めて

珠桜の“心”が欲しいと思った。
< 115 / 162 >

この作品をシェア

pagetop