ハニートラップ

“半信半疑”
目の動きが止まった星野の顔には、そんな文字が浮かんでいる。
長すぎる沈黙に痺れを切らしそうだった時、やっと星野は口を開いた。


「……普通に、“好きだ”って告白して、
ちゃんと付き合えばいいんじゃないですか?」


俺の出方を伺うような凝視。

虚を突かれて一瞬時が止まる。

――そして、拍子抜けするほどアホらしい回答に、ハッと嘲笑が漏れた。


「“好き”とか、“付き合う”とか、
薄っぺらいこと言って何になんの?」


くだらない。時間の無駄だった。
期待した分だけ落胆して冷める。

何気に緊張してたらしく、握っていた手を緩めてポケットに突っ込んだ。


恋だの愛だの。
そんな戯言じゃ、珠桜の心なんて掴めない。


言葉に詰まった星野の横を素通りして会話を終わらせる。

行き詰まり感に重く吐いた息が、静かな廊下に消えていった。
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