ハニートラップ

全部を理解して、汗が急に冷え込む。
自分で自分を制御できなくなりそうな予感を、無理矢理顔を顰めて堪える。

どうにかなる前に、来た道を全力で走り抜けた。

「姉ちゃん!?」

やっと私に追いついた咲が、驚いている声がする。
何事かと見た先に女連れの高峰くんがいたことに気付くと、咲は険しい顔で彼を睨みつけた。

「姉ちゃん、待って!」

跳ねる様に地面を蹴って、咲も私の後を追う。


高峰くんは――ほんの少し手を伸ばしただけ。

すぐに追おうとはした。
けれど、全身にまとわりついた女物の香水の匂いがそれを止めた。

(……この状況で、何が言えんだよ。)

やるせなさに歯噛みして、珠桜を掴もうとした手をだらりと下げる。
背に腕を回しながら、そんな姿を杏奈は可笑しそうに見ていた。

< 127 / 162 >

この作品をシェア

pagetop