ハニートラップ

phase:37 経過


カーテンを閉め切った部屋で、布団に蹲ってもう何日経ったんだろう?

泣いても泣いても悲しみは尽きてくれなくて、最後はぼうっとするばかりになってしまった。

昼か夜かもわからないけど、定期的に俊平が窓を叩く音は鳴る。
あとは家族の呼ぶ声に反応して、最低限の生活を無気力に送るだけ。


家族は心配そうにしていたけど、無理して笑うことしかできない。
咲も、高峰くんのことは両親には黙っていたくれたみたいだ。


(……自分がこんなに落ち込むことがあるなんて、思わなかった。)

窓を打つ音を聞き流しながら、ぼんやりとそんなことを考えられるようになった時――

勢いよくドアが開く音がした。


すぐにドタドタと部屋の中に入ってくる音。
足音の重さ的に、咲だ。

隠れるように布団の中に深く潜っていると、乱暴にカーテンを引く音と窓の錠を開ける音がした。


(――何してるの?)

驚いて布団から起き上がると、久しぶりの陽光が目を刺激する。

思わず腫れた目を細めて顔を背ける間に、窓が開け放たれて湿った空気を外に押し出した。

「珠桜、生きてるか!?」

慌てふためく俊平の声。
窓から部屋の中に飛び込んできた煩い赤毛が、やけに眩しく見えた。

「――じゃ、後は俊平に任せたから。」

一仕事終えたみたいに息を吐いた咲が、あっさりと引き上げていく。
ぶっきらぼうな心配顔をここでちゃんと認識して、心配をかけていた、と胸が痛んだ。

< 129 / 162 >

この作品をシェア

pagetop