ハニートラップ

phase:40 別れ


「珠桜?」

久しぶりに高峰くんが私を呼ぶ声を聞いた時、
世界が丸ごと止まった気がした。

ざわめいていた心臓が、心拍の打ち方を変える。
キュッと狭くなるのに抗って鼓動しようとするから、胸が痛い。

呼吸も僅かに早くなって、足が震える。


ゆっくりと時を動かすように声の方を見ると、

――高峰くんがいる。


驚いたみたいに見開かれた高峰くんの目と、視線がぶつかり合う。
その瞬間、いろんな感情がお腹の底から湧き上がって喉がグッと熱くなった。


「――――高峰くん……。」

それなのに、最初に出てきたのは高峰くんの名前だった。


言い終わるのと同時に、高峰くんが走ってくる。
私の体は引きかけたのに、無意識に伸びてしまった手を取って、腕の中に引き込む。

呼吸が止まった。

細いのに筋肉質で、少し汗ばんだ熱っぽい体に抱き締められて泣きそうになる。
何もかも全部どうでも良くなって、その背中に腕を回そうとした――

なのに。

そこで、息をしてしまった。

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