ハニートラップ
動揺を隠せないまま珠桜を見下ろす。
しばらく俯いていた珠桜が、短い会話をしたあと顔を上げた。
グズグズに崩れそうな癖に、
目だけは真っ直ぐブレさせない。
潔さすら感じてしまって、心の奥で“終わった”と声がした。
「バイバイ、高峰くん。」
“また明日”じゃない別れの言葉。
予感した通り、珠桜は俺の腕をすり抜けていこうとする。
それでも俺はまだ珠桜を諦めたくはなくて。
でも、これ以上の拒絶に耐え切れる自信もない。
どんどん離れていく体温を掴むべきか迷っている間に、
あっという間に珠桜はいなくなってしまった。