ハニートラップ
phase:43 逼迫
街灯がまばらの公園に人影はない。
舗装された道はあるが薄暗く、風で葉が擦れる音が不気味で、入るのを躊躇った。
――やっぱり道を変えよう。
公園に向いた足をもう一度道路に向け直した時、来た道に車のヘッドライトが光った。
ゆっくりと走ってくるそれが、通り過ぎるまで立ち止まって待つ。
思った以上に低速の車がようやく私の前を通過したかと思うと、突然停車した。
不審な動きにギクリとして身構える。
無機質な機械音を立ててスライドするドアから、男が2人出てきた。
「杏奈が言ってたのって、コレ?」
男達は迷いなく私の方を向くと、1人が無遠慮に私を指差す。
ドッと心臓が痛いくらいに脈拍を上げた。
(“杏奈”が……言ってた?)
キーンと耳鳴りがして、思考停止する。
男が発した淡白な言葉から、情報を拾うしかできなかった。
「ガキじゃん。」
もう1人が、卑下た笑いを浮かべて私を見ている。
「何回かお家に行ったのに、夜遊びしないいい子ちゃんだからな。見張ってんの怠かったわ、ホント。」
緊迫した私とは裏腹に、男達はげらげらと笑いながら近付いてくる。
ジャリ、とアスファルトを滑る摺り足が私の恐怖を煽るようにゆっくりと迫る。
(――逃げなくちゃ。)
本能で悟って身を引いたのに、血の気の引いた体は上手く機能しない。
半歩ずつぎこちなく両足が下がって、やっと勢いがついて公園の中に駆け込んだ。
心臓はずっと不規則に強く脈打って、ちゃんと呼吸させてくれない。
それでも全力で走らないといけなかった。
後ろからは「待て待て」と、追いかけっこでも楽しむかのような揶揄い声が迫ってくる。
通りを抜けて、大通りに出て、そしたら――
恐怖で止まりそうになる頭を必死に動かし続ける。