ハニートラップ
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退院した翌日、俺は杏奈のアパートに行った。
“話がある”
そう連絡はしておいたから、案外すんなり部屋の中に通された。
(……相変わらず陰気な部屋。)
毎日目がおかしくなるほど白い病室で、健全に日差しを取り込む生活を送っていたから余計にそう思う。
うんざりして目を細めた。
「……何?今更謝っても遅いから。」
杏奈はドカリとベッドに座って、綺麗に巻いた毛先を手で払う。
事件になったのは知ってるだろうに、警察の手が自分に及ばなかったからこんなに強気なんだろう。
「今の彼氏、かなりハイスペックらしーね。」
余裕な横っ面を言葉で殴る。
案の定杏奈の顔が硬直した。
「勤め先、四葉商事だっけ?
そんなエリートどこで捕まえたの?」
薄ら笑いを浮かべながら、スマホをチラつかせる。
画面に映るのは、杏奈との露骨なメッセージのやりとりと写真だ。
「俺とのこと、バラされたらヤバいんじゃない?」